美濃酪農農業協同組合連合会
西尾牧場さん
農業人
岩村醸造株式会社
日本三大山城 岩村城のふもとに広がる城下町。
昔ながらの街並みが広がり、そこに暮らす人々の営みが変わることなく続いている岩村町の中心街に岩村醸造はあります。
店内に入ると、空気が少し冷たく、流れるジャズが心地よく、昔ながらの町屋づくりの建前には懐かしさを感じます。
整然と並ぶ日本酒の銘柄をひとつひとつ眺めたり、目に留まったものを試飲できたりするおもてなしの空間があり、時には「仕事帰りに一杯」といける角打ちスペースは岩村町民の憩いの場所としても活用されているそう。
奥へと続くトロッコのレールに沿って、つい、その先へ行ってみたくなります。
そこは酒の香りが漂う製造現場。
木曽川水系の天然水が枯れることなく湧き上がり、岩村醸造の心臓に触れるような感覚になります。
岩村醸造は、1787年(江戸時代の天明7年)創業。
大正10年、岩村町で2番目となる株式法人設立と同時に、日本酒の他に味噌、醤油造りもはじめました。
社名が「酒造」ではなく「醸造」となっているのは、そのためです。
その後、味噌・醤油の製造は止め酒造業のみに専念し、現在に至っています。
1985年、築城800年記念としてつくられたブランド『女城主』はあまりにも有名。市内の酒屋に限らず、スーパーマーケットやドラッグストアーにも女城主コーナーがあるほど地元に根付いた日本酒です。ラベルにあしらわれた「おつやの方」の肖像画は販売当初から変わっていません。
代表取締役社長の 渡會 充晃さん(上写真右)は、8年前の社長交代を期に、創業以来販売されている『えなのほまれ』をリニューアルさせました。
「創業以来つくっている『えなのほまれ』の歴史は、紆余曲折ありました。
普段から飲むことができる手頃な酒、そのイメージは良くも悪くもありました。
そのイメージを払拭したい。
普段飲みの酒は手頃な値段でありながらも、より美味しくなければいけないと考えたのです。
『えなのほまれ』は甘口と言われるタイプの酒です。少し前は淡麗辛口と言われるものが流行っていましたが『えなのほまれ』の甘口は譲れませんでした。
日本人は甘味を感じる繊細な味覚を持った民族です。
それがお客様の求める本当の味だと思うんです。」
渡會さんの設計する酒を実現するのは杜氏の鈴木さん。(上写真左)
4人の蔵人と共に、岩村醸造の酒造りを支える職人です。
刻一刻と変化する酒の様子を注意深く観察し、長年培ったノウハウで酒の発酵をコントロールしています。
岩村醸造は、あえて酒蔵のある町名を掲げています。
その理由は、この土地で酒造りをする意義と自らの存在理由を意識し、真の意味での“地酒”づくりを目指しているからです。
だからこそ、原料となる酒米は岩村町内で栽培された『ひだほまれ』を、また仕込みのための水は、米との相性を大切に考え、原料米を育てるものと同じ水質の天然水を、約400年前に掘られた井戸から汲み上げ使用しています。
岩村町はたいへん水に恵まれている土地で、岩盤になっている地下層には清冽な水が絶え間なく流れています。
「穀物と水の相性の良し悪しで味が変わるのは、日本酒だけではありません。
パンやワインでも同じで、その土地の穀物は、その土地の水を使ってつくることが世界共通の認識です。
岩村の町を流れている地下水は酒造りにとっても命の水です。
その水脈が途切れることのないよう、常に気を張っています。」
取材に伺った日は、米と米麹でつくる「あま酒」の仕込みがされていました。
職人たちがすべて手作業で、気を抜くことなく動いています。
「ロングセラーを大切にしながら、それをベースに多くのラインナップを製造し多様化するニーズに応えています。
『えなのほまれ』をリニューアルするにあたっては、ラベルの字体は岩村町内に住む方に書いてもらいました。恵那市笠置町の特産品 ゆずを使ったリキュールやジュースも展開しています。
地元に愛される、誰にでも買いたい時に買える商品を造っていきたいです。」
酒造りの現場はどこか懐かしく、そして神々しいほど美しい景色でした。
そこには脈々と受け継がれた酒づくりの精神と、進化する現代人の味覚を満足させる技を駆使する人たちがいました。
岩村醸造株式会社
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