恵那市夏秋トマト生産協議会
窪田 菜那さん
農業人
恵南こんにゃく生産組合
こんにゃくの原料である「こんにゃく芋」。恵那市では、上矢作、串原、明智の3つの地域で生産されています。
寒さや傷に弱くデリケートで、里芋やさつま芋といった他の芋類と比べても、作るのに手間がかかると言わるこんにゃく芋。
60年前の作り方を今なお継承しているという「恵南こんにゃく生産組合」の後藤順一さんに、この地域のこんにゃく芋作りの特徴と変遷、これからについてお話を伺いました。
ー恵南こんにゃく生産組合は、どのような方たちでやっていらっしゃるんですか?
「上矢作・串原・明智というこんにゃく芋を作っている3つの地域で連携してやっています。
小さい規模では他にも作っている地域があるかもしれませんが、出荷しているのは今はこの3つの地域だけなんですよ。
この辺りでも、全盛期の昭和40年代には、農地の8割以上、9割くらいがこんにゃく芋の畑だったんですが、今はもう逆転してしまって。ほとんどが田んぼになって、こんにゃく芋の畑は1割くらいになっていますね。
今では3つの地域で作り方を統一して、60年前から続く作り方を今も継承しています。」
ー60年も前から続いているんですね。こんにゃく芋は、どのように作るのですか?
「里芋やジャガイモのような芋は栽培が1年で終わりますが、こんにゃく芋の場合は2年以上かかります。
最初は種芋を植えて、できた1年生(生子…キゴ)から3年生の芋を10月ごろに掘り起こし、それを冬の間は暖かいところに保存しておく。5月ごろになったら、またその小さい芋を植えて、そこからできた芋を10月に掘るんです。掘ってからも、10日から2週間ほど、雨に濡らさずに太陽の光で自然乾燥させて、健康なものとそうでないものを見分けてから出荷します。
中でも手間がかかるのは、やっぱり冬の間の管理ですね。
最低でも5~6度くらいには温度を保っていないと、目が出なくなったり腐ってしまったりするので、本当に難しいんです。家を留守にしても危ないし、電熱で管理してもお金がかかるし、保管方法が大変なので、できる人はなかなかいません。
地域の人で「自分でこんにゃくを作りたい」という人はいても、「種芋からこんにゃく芋を作りたい」という人はほとんどいませんね。」
ーこんにゃく芋作りにそんな裏側があるとは知りませんでした。この辺りで作っているものは、どういうこんにゃく芋なんですか?
「この地域で育てられているのは「甲州玉」という品種です。60年ごろ前に「甲州玉」を上矢作で広めた方がいたそうなんですが、その影響を受けながら、串原や明智で栽培の指導が広まって、それから10年くらいかけてこの地域に定着したんです。
その甲州玉の特徴は、何と言っても粘り気ですね。
こんにゃく芋の粘り気は、主成分が「マンナン」というもので、それがノリ状になるようにできているんですが、甲州玉はこのノリが日本で一番良いと言われていて。
業者の方からも、岐阜県のこんにゃく芋は、製品にした時の味も、他と全く違うという風に聞きましたね。今こんにゃく芋は群馬が主流だけど、それで作ると粘りが少なく、同じ水の量ではこんにゃくができないらしいんですよ。」
ーこんにゃく芋作りで、こだわりっていることはなんですか?
「こだわりしかないなと思うけど、やっぱり、甲州玉を守ることですかね。
岐阜県の他の地域でも広まったらしいんですが、今でも残っているのは、この地域だけのようです。自分で作り始めて丸7年経つところですが、作り始めた時は、甲州玉が日本一っていうことは深く考えていませんでしたし、本も読んでいなかったんです。それが業者さんに言われるうちに、次第に甲州玉の良さについて考えるようになって。
今は他の品種を作っている地域もありますが、甲州玉と混ざらないように、しっかり守っていきたいなと思います。
また、他の地域でも甲州玉が広まった時に、ここでは他ではやってないことを1つやったんです。それが、化学肥料をなるべく使わないこと。
これも、60年前からずっと徹底していますね。」
ー最後に、これからの夢や、挑戦したいことを教えてください!
「昔と比べるとこんにゃく芋をこの地域で育てる人も減りましたが、産地が潰れてしまうのを防ぐために、研修生を受けれたいです。
土日研修生や兼業農家、細々と一人や二人で家庭菜園をやっている人とかもいいと思います。
私たちが教えて理解できることばかりではないので、教えるのではなくて、こんにゃく芋作りを体験してもらいたいです。」
【販売情報】
JAひがしみの恵南アグリセンター
電話:0573-56-2171