恵那の食に挑戦する 農業人

銭坂畜産

水野 浩孝さん

  • 農業人

 

恵那市山岡町 2つの農場で繁殖から肥育までの一貫生産体制を行っている銭坂畜産。

 

CSF(豚熱=豚コレラ)により、銘柄豚『山金豚』を産んできた種豚(父豚・母豚)を失った銭坂畜産が、再び『肉質のいい、旨い豚肉』を追い求めて試行錯誤してきた経緯を、社長の水野さんに伺いました。

 

 

 

-銭坂畜産のあゆみを教えてください。

 

 

祖父の代から豚は飼っていましたが、1987年(昭和62年)、父(現会長)が有限会社を始めました。私で2代目です。

 

従業員は9名(アルバイト1名含む)と会長と私です。

 

種豚(父豚14頭、母豚530頭)と、哺乳期から肥育期までの肉豚(子豚約6,300頭)を育てています。

 

 

 

-銭坂畜産の飼育のこだわりや特徴を教えてください。

 

本社農場で種豚を交配(人工授精)させて肉豚を産む繁殖作業を行い、第二農場でその肉豚の肥育作業を行う一貫生産体制をとっているところです(※1)。どんな親から生まれたか見える形なので、私たちも安心できます。

 

1 養豚の経営には次の3つの形があり、銭坂畜産は③を行っています。

①繁殖経営:種豚(母豚)を妊娠させ、肉豚(子豚)を取り上げ、その肉豚を販売する経営形態。

②肥育経営:肉豚を肥育し、食用として出荷する経営形態。

③繁殖肥育一貫経営: 繁殖と肥育を一貫して行う経営形態。

 

 

 

CSF時の対応はどのような事をされましたか?

 

2019年(平成31年)年4月に肥育の第二農場、同年7月に繁殖の本社農場で感染し、約8,000頭を全頭殺処分としました。

 

その後、シャワー室、車両の消毒場、持ち込み品の消毒設備を整備し、施設内は一方通行としました。

 

以前は出荷も社員が行っていましたが、運搬会社に外注する形に変更しました。

社員の負担軽減と、ウイルスなどの見えない敵から社員と豚を守るためです。

 

 

 

-豚を失ってからこれまでの経緯を教えてください。

 

まず、繁殖のための種豚(母豚)を仕入れようと思いましたが、他の養豚農家と競合になってしまって500頭を一気に仕入れることができない。ならば、これまでと違う母豚で挑戦してみよう!ということで、2020年(令和2年)の1月から月100頭ずつ、500頭の母豚を揃えました。

 

しかし、正直、ここまで失敗の連続とは思いませんでした。

 

私も豚を飼って167年経ちます。経験から、母豚の頭数があれば生産が安定すると思っていましたが、豚の体調管理に苦戦しました。これまでと違うタイプの母豚だったことと、農場に豚がいない期間が長かったため無菌状態に近く、常在菌のような弱い菌やウイルスが動き出したことが要因だったのではないかと獣医さんと話していました。管理の仕方は本当に難しい

 

CSFを経験したこともあり、豚が咳をしたり、餌の食べが悪かったりすると、すぐ心配してしまいますね。

あと、父豚もまだ若いので精子が安定しない、でも母豚は発情する、そのバランスも難しかったです。

 

いろんな人の意見を聞きながら勉強しています。同じような状況の養豚農家さんがどういう対策をとっているか、聞いてみたいですね。

 

 

 

-苦難を乗り越え2020年(令和2年)11月に初出荷と伺いましたが、いかがでしたか?

 

私たちも食べてみました。美味しくできましたよ。

 

1週間に300頭出荷するペースになりました。

 

再開にあたり、上手に産ませて、上手に出荷する方法を見つけるのが優先、肉質の追及はその後と思っていました。けれど、出荷する以上は『いい肉』を作りたくなるんですよね。

 

今は、生産管理を徹底して、生まれてから出荷まで上手に育てて、肉質を上げることに注力したいです。

 

 

 

-リクルート計画はありますか?

 

現在、23名の社員を募集しています。全国から来ていただけたら嬉しいです。

 

仕事内容は、本社農場(繁殖作業)で、母豚への餌やりや豚舎の清掃、人工授精、分娩介助のほか、産まれたばかりの子豚のお世話などです。体重30kg程度になった子豚は第二農場へ移動。第二農場(肥育作業)では子豚たちを出荷するまで管理します。豚舎の清掃や空調管理、出荷前の体重測定やトラックへの積み込み作業などの仕事があります。

 

終業後は、施設内でシャワーを済ませ、作業着も置いて帰っていただけます。会社で洗濯しています。

 

※この記事は2020年(令和2年)に作成されたものです。社員募集についてのお問合せは、銭板畜産まで直接お問い合わせください。

 

 

 

-今後、挑戦したいことはありますか?

 

今すぐということではありませんが、農場の拡大・整備を考えています。作業しやすい豚舎にすることで、農場間の子豚の輸送負担の軽減にもなるし、頭数も増やせます。

 

あとは、今は母豚を購入して繁殖をしていますが、今後は自家繁殖にも挑戦したいですね。

 

 

 

【基本情報】

社名    有限会社銭坂畜産

代表者名  水野浩孝

所在地   恵那市山岡町馬場山田287

従業員数  11名(アルバイト1名、社長、会長含む)

敷地面積  非公開

飼育数   約6,300頭 (2021年1月現在)

生産体制  一貫生産体制(繁殖・肥育)

取材日   2020年(令和2年)1228

生産者情報

銭坂畜産

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