銭坂畜産
水野 浩孝さん
農業人
三浦畜産
恵那市岩村町 恵那山と中央アルプスを望む山の中に三浦畜産の豚舎はあります。
恵那市内でも流通している銘柄豚『恵那山麓 寒天そだち三浦豚』を生みだす、こだわりの飼料づくり、また三浦さんの今後の展望をうかがいました。
-三浦畜産のあゆみを教えてください。
1977年(昭和52年)に6軒の養豚農家でスタートした岩村養豚組合も、組合員の高齢化もあり、1軒になってしまいました。
今は、私と息子、従業員6名の計8名で約4,500頭の豚を育てています。
母豚約120頭による繁殖から肥育を一貫して行うものと、静岡県と愛知県の契約農場から子豚を入荷して肥育する2つの形をとっています。分業制は生産性が高いという利点もありますが、今後、自社の繁殖場を作って一貫してできるようにしたい思いもあります。※1
※1:養豚の経営には次の3つの形があり、三浦畜産は③を行っています。
①繁殖経営:雌豚(母豚)を妊娠させ、子豚を取り上げ、その子豚を販売する経営形態。
②肥育経営:子豚を肥育し、食用として出荷する経営形態。
③繁殖肥育一貫経営: 繁殖と肥育を一貫して行う経営形態。
-三浦畜産の飼育のこだわりや特徴を教えてください。
うちの特徴は、エサですね。自家生産している新鮮な小麦粉加工品を主原料としたエコフィード飼料(エコ「eco」と飼料を意味するフィード「feed」を併せた造語)です。
エコフィードは「食品残渣」と言われてしまいますが、売れ残りや食べ残し、期限切れなどではなく、新鮮な物で私たちが食べているものとなんら変わりません。製パン工場や製菓工場の生産過剰品を購入しています。
それら小麦粉加工品に、恵那の特産である細寒天を作るために煮立ててエキスをしぼった海藻天草を加えて食物繊維を補います。また、副原料のタンパク源には大豆油、米油、豆乳の搾りかすなど。肉の匂いをとるために、乳酸菌・枯草菌なども配合しています。これらが三浦豚の柔らかさとジューシーな食感を生み出しています。
遺伝子組み換えのトウモロコシは使っていません。
三浦豚の特徴は、悪玉コレステロールを減らすオレイン酸を多く含み、とろけるような脂身のうまみで、一番のセールスポイント。脂の質が違います。脂肪の融点は低いけれど、肉が締まっている「一度食べたら忘れられない美味しい豚肉」です!
あとは健康な豚に育てるためには、病気にならないのが一番なので、ワクチンで予防しています。人も豚もストレスがかかると伝染病にかかりやすいので、ストレス軽減にも気をつかっています。
-CSF(豚熱=豚コレラ)時の対応はどのような事をされましたか?
私の農場では、2019年(平成31年)2月5日に感染が確認され、約4,300頭が殺処分になり、大変残念でした。
その後も、岐阜県、愛知県で相次いでCSFの感染拡大が確認され、どうなってしまうのかと不安な日々の中、場内の掃除・消毒を続け、道路整備・修繕作業を終えました。3ヶ月後に移動禁止が解除されてからは、エサの回収、乾燥作業をしていました。
野山には、感染した猪が多くなってきて、CSFワクチンを接種しないと経営再開できない状況であり、国会議員への陳情に出かけました。当時の内閣は、農畜産物の輸出拡大を目指しており、優秀で安全なワクチンがあっても接種許可が出ず、途方に暮れていました。※2
2019年(令和元年)9月17日、埼玉県でCSF感染が確認されると、農水省から一気にワクチン接種許可が出ました。
多くの方からの励ましの声もいただき、いろいろな助けも借りて、もう一度頑張ろうという気持ちになりましたね。
私の農場も、同年11月にワクチン接種した肥育素子豚を導入し、CSFに感染して1年経った2020年(令和2年)2月から出荷を再開することができました。
※2 日本は、CSF感染により、家畜の伝染病を監視している国際機関 OIE(国際獣疫事務局)から「清浄国」の認定を停止されました。清浄国でなくなると、豚肉の輸出に影響が出る場合もありますが、農林水産省は個別に交渉して輸出しているため大きな影響はないとしています。清浄国に戻るには、豚熱が最初に発生してから2年の間に、1年以上、ブタで発生していないことや、ワクチンを接種していないことなどが要件となっています。
-三浦さんが好きな『恵那山麓 寒天そだち三浦豚』の部位や食べ方を教えてください。
心臓の近くの部位が美味しいですね。肩ロースとかリブロース。ランプも美味しいですよ。食べ方は、とんかつが好きかな。
-『恵那山麓 寒天そだち三浦豚』は、恵那市内で購入できますか?
大井町の『岩島屋』、明智町の『あづま精肉店』、山岡町の『みうらや』で購入できます。
あとは、市内の飲食店でも食べられます。
-今後、挑戦したいことはありますか?
10年前から、6次産業化として、ハム、ソーセージ、ベーコンの試作をしています。まだ試作ですけどね。商品化できるように頑張ります。
あと、とても大きな夢ですが、群馬県の『肉の駅』※3のような展開ができるとおもしろいなと思っています。
恵那市は養豚が盛んだったけど、CSFに感染し痛手を負ってしまった。県も市も、私たちと一緒に養豚を盛り上げてもらえると嬉しいですね。
※3 群馬県食肉卸売市場に併設された直売施設で、地元の銘柄肉や総菜が購入できる。
恵那市内で『恵那山麓 寒天そだち三浦豚』の買えるお店
◎肉の岩島屋 岐阜県恵那市大井町227–6
◎あづま精肉店 岐阜県恵那市明智町1154–4
◎みうらや 岐阜県恵那市山岡町下手向227–4
【基本情報】
社名 三浦畜産
代表者名 三浦義和
所在地 恵那市岩村町飯羽間3692–1–2
従業員数 8名(三浦さん含む)
敷地面積 約49,000㎡
飼育数 約4,500頭 (2021年1月現在)
生産体制 一貫生産(繁殖・肥育)及び肥育
HP なし
取材日 2020年(令和2年)12月21日
三浦畜産