恵南こんにゃく生産組合
後藤 順一さん
農業人
堀養蜂園
東濃地方で定置養蜂をおこない、こだわり抜いた国産はちみつを販売する堀養蜂園。
徹底した蜂の管理の元、この地域に自生する山桜、上溝(うわみず)桜、アカシア、ハゼ、ゆず、冬青(そよご)といった花々から“単花蜜”を採蜜しており、最もこだわる「アカシア蜜」は平成27年に県知事賞を受賞しました。
自然と向き合い、みつばちと共に歩む園主の堀孝之さんに、起業までのエピソードや養蜂の奥深さ、これからの夢をお伺いしました。
ー堀さんが養蜂を始めたのはいつからですか?
「11年前、21歳の時です。一番最初は、僕の初めてのアルバイトの給料で買って、1箱から始めました。
元々、母親の実家が明智にある伊藤養蜂園さんで、それが一番きっかけになったんでしょうね。子供の頃から蜂が好きだったんですよ。スズメバチとかヘボなど、蜂や昆虫の生態を調べて幼少期を過ごしていました。一番の原点です。」
「養蜂家として食べていこうと決めたのは、始めてから4年後のこと。病気、法律、公害、蜜源…など熱心に勉強していくうちにどんどんのめり込んでいって、初めて群数を少し増やしました。その頃は居酒屋で夕方から朝までほぼ毎日働きながら、少し寝て蜂を見るという生活で結構きつかったですね。
新規就農のOKが出たのは、29歳の時。2年間、もう何十回も市役所に通いましたよ。僕は認めてほしかったんです、いちご農家とかトマト農家だけじゃなくて、養蜂も畜産で「農業の1つ」だって。
「はちみつなんかじゃ生計は成り立たん」って何度も何度も言われ続けましたが、でも僕はちゃんと利益を出せるような業態にしたいって、養蜂でやるんだって信じてました。」
ー「養蜂家」としてのスタートまでにも、様々なご苦労があったんですね。どんな部分にこだわっていますか?
「この地域はとても自然が豊かで、蜜源となる植物が多く自生しています。
だからうちでは、極力”百花蜜”という括りではなくて、花々によって絞り分ける単花蜜”にこだわっています。花の種類によって味、香り、甘み、色も全然違うんですよ。
これは、植物の知識がないとできません。「花芽がこれくらい膨らんできたからあと何日で開花する」「これくらいの温度が何日間続くと開花まであと3日くらい」というような、開花する天候と温度、時期を把握していないといけません。僕は、5年間樹木医さんの元でこれらを勉強させてもらいました。
言ってしまえば、養蜂は管理職です。全て管理をしていく。ハチミツを絞るがメインじゃないんです。自然や生態系の理解も含め、蜂を管理していくことが重要な仕事です。」
ー蜂の管理、とは具体的にどういったことを?
「まずは女王蜂の健康面です。箱の中を3日1度くらい全部見て、産卵の仕方、幼虫の健康状態を確認します。働き蜂も、動きが少しでもおかしければ、農薬の関係があるかなとかを考えます。
例えば、蜂が農薬の散布されている地域に行ってしまった場合、農薬のかかった蜜を吸って巣箱に持ってきてしまいますよね。そうすると、巣箱の中に充満させてしまう。日が経てば経つだけ巣箱の状況が悪くなってしまうので、1日1日がとても重要です。残留農薬が入っているみつを持ってきた群は、巣門の入り口を見ることで全て判断ができます。本当に見ていると、涙か出ちゃうくらいかわいそうだなと思うこともあります…。」
ー1つの巣箱に蜂はどれくらいいるんですか?
うちの巣箱は2段になっていて、1箱で5万匹ほどの蜂がいます。それが230群(箱)あります。1箱3万匹って言う人もいますが、それだと働き蜂に負担がかかりすぎて、5万匹くらいいないと完熟させられないと僕は思っています。
全部絞り終わってからの話でいうと、1箱1箱で蜂の性格も全然違うんですよ。
穏やか、とか全然遊んでばっかじゃん、とか。本当に本当に。集計してみると、この群は年間で100キロ集めたのに、ここは50キロしか集めてない、とかね。
蜂が常にベストな状態を保ってあげて、負担をかけないようにミツバチを管理していくということが大事だと思います。」
ー養蜂、はちみつがこんなに奥深いものだとは今まで知りませんでした。買い手も知識をつけることが大事ですね。
「樹木や蜂に関する知識も踏まえて、消費者の方に本当に安心・安全な良いものを届けたいと思っています。
僕は「非加熱」「生はちみつ」という言葉は使いません。はちみつは、14度以下で結晶がはじまるので、日本で結晶化させないではちみつを保管する事は、年間を通じて一切温度がぶれない倉庫の中での管理を除いては不可能です。うちでは流動状に戻すため、45度以下で溶解して瓶に詰めて販売させていただいています。酵素は70度以上でないと破壊されることはありません。本当に自信のあるものを「国産はちみつ」として届けています。
安心安全に繋ぐ第一歩として、これが通用するようになれば良いと思います。
また、消費者の方に向けては「ミツバチは怖くないこと」「ミツバチがいなければ僕たちは生きていけないこと」を理解してもらうために講演会を徐々に増やしています。
正しい認識が消費者の間で広まって行くことで、正しい養蜂家が増えて後継者を育成することにも繋がってくると思います。」
ー今後の堀さんの夢を教えてください。
「品質を絶対に守り、ニーズに答えていくことはもちろんですが、次の目標としては農家直営のカフェをやりたい。はちみつのスイーツを楽しめるお店。田舎の女の子が癒されにくる場所を作りたいな思っています。
これは大きな夢として、僕は養蜂で世界を変えたい。
「自分だけがよければいい」という価値観ではなく、身近にある自然のありがたさ、自然環境も含めて僕らの暮らしがあること、そうした人間のあるべき姿を、自分の周りや地元から農業を通して伝えていけたらと思っています。」
【販売情報等】
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